遺言書が複数ある場合はどれが有効? (遺言書効力について) | さいたま市 OBI行政書士事務所

query_builder 2021/02/18
ブログ
writing-1149962_640 (1)

遺言の撤回

男性疑問

遺言は一度書いたら内容を変更できないのでしょうか?

女性教える

自筆証書遺言も公正証書遺言も、書かれている内容をいつでも撤回することができます。

(つまり、内容を変更できるということです。)


ただし、きちんと「遺言の方式 (自筆証書遺言や公正証書遺言など)」に従って撤回することが必要です。

定められた要件(要式)を満たしていることが必要ですので、特に自筆証書遺言を作成する場合には注意が必要です。


要件を満たせば、自筆証書遺言で撤回しても、公正証書遺言で撤回してもOKです。


例えば、自筆証書遺言を作成したのちに、撤回(内容を変更)するために、今度は公正証書遺言を作成することも可能です。

もちろん、前に書いた自筆証書遺言を新しく作成した自筆証書遺言で撤回することも可能です。



民法では、以下のように定められています。


【民法 第1022条】

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

男性疑問

では、自筆証書遺言と公正証書遺言の両方が見つかった場合にはどうなりますか?

女性教える

公正証書遺言の方が優先されそうな印象があるかもしれませんが、自筆証書遺言と公正証書遺言とで、どちらかが効力が強いということはありません。


原則的には最も日付が新しいものが有効とされます。

(遺言を書いた方の(直近の)意思を最も反映していると考えられるため)


ただし、2つの遺言がある場合に、必ずしも新しいものが全て有効となり、古いものが全て無効となるとは限りません。

男性困る

どの部分が有効か無効かを判断する方法はありますか?

女性閃き

はい。民法では、次のように定められています。


【民法 第1023条】

1. 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす



ここでは、いくつか例をあげて考えてみます。


【ケース1】2つの遺言の内容が全く異なる場合


「2019年4月1日の遺言」

・不動産●●は、長女Aに相続させる。

・▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxは、長男Bに相続させる。


「2020年10月1日の遺言」

・不動産●●は、二男Cに相続させる。

・▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxは、次女Dに相続させる。


※このように、1つ目の遺言と2つ目の遺言の内容が全く違う場合には、2つ目の「新しい日付の遺言」が有効になり、1つ目の古い遺言は無効になります。



【ケース2】2つの遺言の内容の一部が異なる場合(1)


「2019年4月1日の遺言」

・不動産●●は、長女Aに相続させる。

・▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxは、長男Bに相続させる。


「2020年10月1日の遺言」

・不動産●●は、二男Cに相続させる。

・▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxは、長男Bに相続させる。


※ケース2では、銀行の預金についてはどちらの遺言でも長男Bに相続させると書かれていて変更がありませんが、不動産の●●を相続させる相手が長女Aではなく、二男Cと変更されています。

※この場合も、2つ目の「新しい日付の遺言」が有効になります。




【ケース3】2つの遺言の内容の一部が異なる場合(2)


「2019年4月1日の遺言」

・不動産●●は、長女Aに相続させる。

・▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxは、長男Bに相続させる。


「2020年10月1日の遺言」

・▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxは、二男Cに相続させる。



※ケース3では、1つ目の遺言では不動産●●を長女Aに相続させると書かれていますが、2つ目の遺言には書かれていません。このようなケースでは、不動産●●については特に変更がないものと思われるため、


・不動産●●は、長女Aに相続させる。


不動産●●については、1つ目の遺言の内容が有効とされます。


※しかし、▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxについては、1つ目の遺言では長男Bに相続させると書かれているのに対して、2つ目の遺言では二男Cに変更されています。

 そのため、▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxを相続させる相手については、2つ目の遺言で1つ目の遺言の内容を「撤回(変更)」したものと判断されます。


 つまり、▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxについては、2つ目の遺言の内容が有効とされます。




(注意) 実際には、ケース3の2つ目の遺言のような書き方は混乱を招く恐れがあるため、お勧めできません。


前に書いた遺言の内容を撤回(変更)したい場合には、以下のように、改めて全て書き直すことが望ましいと言えます。



「2019年4月1日の遺言」

・不動産●●は、長女Aに相続させる。

・▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxは、長男Bに相続させる。


「2020年10月1日の遺言」

・不動産●●は、長女Aに相続させる。

・▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxは、二男Cに相続させる。

女性教える

また、同じく民法第1023条の2項には、次のような定めもあります。


【民法 第1023条】

2.前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する



これはどういうことかと言うと、例えば遺言に


・不動産の●●は、長女Aに相続させる。


と書かれていたとします。


しかし、この遺言を作成した後に、この遺言を書いた方が不動産●●を処分(売却等)してしまった場合はどうなるでしょうか?


このような場合が、民法で言う「遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合」に該当します。


つまり、遺言を書いた時点では不動産●●は長女Aに相続させようと思っていたが、その後、何らかの事情により、不動産●●は売却する (=長女Aには相続させない) こととした、と考えられるため、


・不動産の●●は、長女Aに相続させる。


という部分については、「撤回」されたものと判断します。

NEW

  • 相続における遺留分とは何か? | さいたま市 OBI行政書士事務所

    query_builder 2021/03/25
  • 遺言書が複数ある場合はどれが有効? (遺言書効力について) | さいたま市 OBI行政書士事務所

    query_builder 2021/02/18
  • 相続手続きは何から始めればよいのでしょうか? 流れなどをご説明します | さいたま市 OBI行政書士事...

    query_builder 2021/02/16
  • 法定後見制度とはどのような制度か、わかりやすくご説明します | さいたま市 OBI行政書士事務所

    query_builder 2021/01/07
  • 成年後見制度とは何か、簡単にご説明します | さいたま市 OBI行政書士事務所

    query_builder 2021/01/07

CATEGORY

ARCHIVE