はい。民法では、次のように定められています。
【民法 第1023条】
1. 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
ここでは、いくつか例をあげて考えてみます。
【ケース1】2つの遺言の内容が全く異なる場合
「2019年4月1日の遺言」
・不動産●●は、長女Aに相続させる。
・▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxは、長男Bに相続させる。
「2020年10月1日の遺言」
・不動産●●は、二男Cに相続させる。
・▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxは、次女Dに相続させる。
※このように、1つ目の遺言と2つ目の遺言の内容が全く違う場合には、2つ目の「新しい日付の遺言」が有効になり、1つ目の古い遺言は無効になります。
【ケース2】2つの遺言の内容の一部が異なる場合(1)
「2019年4月1日の遺言」
・不動産●●は、長女Aに相続させる。
・▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxは、長男Bに相続させる。
「2020年10月1日の遺言」
・不動産●●は、二男Cに相続させる。
・▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxは、長男Bに相続させる。
※ケース2では、銀行の預金についてはどちらの遺言でも長男Bに相続させると書かれていて変更がありませんが、不動産の●●を相続させる相手が長女Aではなく、二男Cと変更されています。
※この場合も、2つ目の「新しい日付の遺言」が有効になります。
【ケース3】2つの遺言の内容の一部が異なる場合(2)
「2019年4月1日の遺言」
・不動産●●は、長女Aに相続させる。
・▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxは、長男Bに相続させる。
「2020年10月1日の遺言」
・▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxは、二男Cに相続させる。
※ケース3では、1つ目の遺言では不動産●●を長女Aに相続させると書かれていますが、2つ目の遺言には書かれていません。このようなケースでは、不動産●●については特に変更がないものと思われるため、
・不動産●●は、長女Aに相続させる。
不動産●●については、1つ目の遺言の内容が有効とされます。
※しかし、▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxについては、1つ目の遺言では長男Bに相続させると書かれているのに対して、2つ目の遺言では二男Cに変更されています。
そのため、▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxを相続させる相手については、2つ目の遺言で1つ目の遺言の内容を「撤回(変更)」したものと判断されます。
つまり、▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxについては、2つ目の遺言の内容が有効とされます。
(注意) 実際には、ケース3の2つ目の遺言のような書き方は混乱を招く恐れがあるため、お勧めできません。
前に書いた遺言の内容を撤回(変更)したい場合には、以下のように、改めて全て書き直すことが望ましいと言えます。
「2019年4月1日の遺言」
・不動産●●は、長女Aに相続させる。
・▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxは、長男Bに相続させる。
「2020年10月1日の遺言」
・不動産●●は、長女Aに相続させる。
・▲▲銀行■■支店 普通口座xxxxxは、二男Cに相続させる。